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《蝶籠》

囚われた蝶  捕らえた人間  無垢な君  愚かな僕    交錯し絡み合う  僕たちの歪曲周波数

   

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【月見酒】後編

 あぁあああ…!!スミマセン、まだ続きま す。


 …まぁ、期待されてるような本番とかはありませんので。



「ゲホっ、ゴホっ…!!」
「ん?そんなに強かったかぇ?」
 口の端から少し垂れた酒をペロリと舐めながら、飄々と言う。強いなんてもんじゃない。焼けるような熱さで息もままならない。
「…っく」
 体が火照ってくる。
「ふふ、いい眺めじゃのぅ。とっておきの【マタタビ】じゃ」
 近付いて来る手を邪険に払おうとして失敗し、逆に引き寄せられる。
「!!」
「ここまで弱いとは思わなんだが、コレはコレでまぁ良かろうよ」
 再度口を塞がれ、その唇を力任せに噛み千切る。
「っつ!!痛いのぉ。そんなにツンツンせんで、少しはデレっとしてくれんかの。今流行りらしいぞ?」
 掴まれた腕が、密着した体が痺れてくる。不意に、視点が一段下がる。枝を踏み外したのだと理解する前に意外とがっしりとした腕に抱き上げられる。
「おっと。大丈夫か…て、痛たたっ!!そんなに暴れるんじゃ…!!」
 落ちてもいい。とにかくこの腕から逃れたくて目茶苦茶に暴れる。
「あーもう、分かった分かった!!今夜はもう何もせんよ」
 溜め息ひとつ。トンと灰色の猫の指が額を突く。途端、体の力が抜けていく。
「どうじゃ?少しはスッキリしたかぇ?」
「…体が全く言うことを聞かないが?」
 硬直してる訳ではないが、ヒドく重い。しかし、不思議と不快さは無かった。
 太い枝に腰かけた灰色の猫に寄り掛かるような体勢にさせられる。見上げた位置にちょうど良く二つの月が浮かんでいる。最早、抵抗するのも諦めた。
「お前は結局、何者なんだ」
「…さて。おぬしと似たようなもんじゃよ」
「…」
 俺の長い髪を緩々と指で梳きながらひとり酒を干していく。

 どのくらいの時間が過ぎたのか。いつの間にか微睡んでいたらしく、ふと気が付いた時には空は白み始めていた。背中にあった微かな温もりは無く、ままならなかった体の自由も戻っている。
 ゆっくりと眠りから覚めたのはいつ振りだろうか。他者からの感情の共鳴も無く…

『感情の共鳴も無く?』

「…」
 あの灰色の猫に感情が無かった訳ではない。それなのに、その感情が自身の心へ響くことは無かった。唯の一度も。
「何なんだあの猫は…」

 その灰色の猫が、藍閃の町外れに住む呪術師だとリークスが知ったのはそれから暫く経ってからのこと。

「…ふぅ。やっと眠ったか。ほんに、繊細な奴じゃのぉ」
 リークスの体を幹に預け、スルリと樹を降りる。

「ふふ、…また、の」


 END
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