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《蝶籠》

囚われた蝶  捕らえた人間  無垢な君  愚かな僕    交錯し絡み合う  僕たちの歪曲周波数

   

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無題

 なんとなくSRXでバレンタインSS(遅刻)。

 設定はだれともくっついてない黄金ED。
 みんな仲良し、誰もドナドナしてない。


 長いです?


 2月14日、夕刻。
 アキラは教官室で途方にくれていた。
 目の前の机には17個の包みが入った大きな紙袋。
「…何で?いったい、どういうことなの?ねぇ!?」
 独り言にしては過大な声量で疑問を吐露する。
「…さて、僕にそう問われましても」
 先ほどまで、独りかと思われた室内に涼やかな声音が響く。
 勢いよく振り返った先には勿論、甘粕補佐官の姿がある。
「今日が何の日か知ってる?」
「2月14日です」
「そう!バレンタインよ!?」
 行き場の無い何かがアキラの肩を震わせる。
「普段、誕生日だクリスマスだってイベント大好きなあの子たちが、今日に限って何も言ってこないどころか誰一人つかまらないのよ?」
 仕事の合間に準備しておいた人数分のチョコレートが哀愁を醸しだす。
 サブスタンスは定期メンテナンス、オペレーターの3人はVOX整備部との打ち合わせ、石寺長官は上役会議だから仕方が無い。しかし…
「ISのみんなは特に何も無いはずなのに、本当にどこいっちゃったのかしら…」
「僕はここにいますが…?」
 きょとん。
 そんな擬音が聞こえそうな顔だった。
「…、…本当だ。やだ、私ったらごめんなさい!!」
 慌てて紙袋から可愛らしい包みをひとつ取り出すと、両手で差し出す。
「これ、甘粕くんの分です!いつもありがとう、本当に助かってる。ささやかだけど受け取ってもらえるかしら?」
 オマケに上目遣いのはにかみスマイル。甘粕は忘れられていたショックも吹き飛んだ。
「ありがとうございます。教官の補佐は僕にとっても大切な仕事ですから」
 お義理とはいえ、ISの連中よりも先にもらえたことに大人気なく心中でガッツポーズをつくりながらも表面上はいつもどおりの微笑を繕った。
「それにしても、みんな遅いなぁ。いっそ、練習室に置き逃げしてきちゃおうかな?」
「…」
 ピピっ
 かすかな電子音。甘粕の通信機からのようだ。
「ちょっと失礼致します」
 時間にして1分程。通信を切るとアキラへと向き直る。
「教官。意気消沈中のところ申し訳ありませんが、長官がお呼びです」
「えぇ~?」
 明らかに不満の声。
「この間の案件についての最終確認だそうです」
「っうぐ。それは、行かないとさすがにダメよねぇ…。しかし、こんな日に会議なんてしなくてもいいのに」
 はぁ、と盛大なため息は一緒に幸せまでも流れていきそうだ。
「…長官の分は節分よろしく投げ付けてやろうかしら?」
「…御武運をお祈りします…」
「っちょ!冗談だってば!出来るわけないじゃない!…もぅ、行きましょう」
 長官の分の包みを持って、二人は教官室を後にした。

「終わったー!」
 緊張でこわばった体を伸ばす。
 長官室を出てみれば、辺りは既に宵闇色だった。結局、チョコは退室際に普通に渡してきた。
「いつ、投げ付けるのか楽しみにしていたのですが」
「…甘粕くんて、じつはイイ性格してるよね」
 教官室に戻って、まだ中身の入ったままの紙袋を眺める。
「うん、つかまらないものはしょうがない。明日渡すことにするわ」
 ビーっ、ビーっ、ビーっ!!
 突如鳴り響くレッドアラート…にしては軽やかな音。
 おもむろにポケットから通信機を取り出すアキラ。
「…。いい加減、その着信音やめませんか?」
「ん?あ、タクトくんからメールだわ」
「…」
 実際のレッドアラートが鳴ることはなくなったが、分かっていても心臓に悪い。
「『至急練習室に来られたし』?何かあったのかしら?…行かなくちゃ!!」
 小さい歩幅をフル稼働させて教官室を出て行く。その背中を追って甘粕も動いた。

 バンっ!!
 お世辞にもお行儀の良くない所作で戸を勢いよく開ける。
「タクトくん!何があったの?」
 パパパパパーン!!
 瞬間、鳴ったのは大量のクラッカー。
「ハッピーバレンタイーン☆」
「…」
 まさに、鳩が豆鉄砲を食らったが如し。
「アレ?お~い、大丈夫か?寝てんのか?なら俺が目覚めのキッスを…」
「ヒジリっ!!そんなことは僕の目が黒いうちは断じて許可しないからな!!」
「タクト、残念だがお前の瞳は黒くない。茶色だ」
「黒くても茶色くても無しだそんなもん!却下だ却下!」
「ちょ、ユゥジ耳元で大声出さないでよ。さっき言ってた大人の余裕を何処に捨ててきたのさ」
「ソーだよユーたち、どうせならみんなでシング ア ソングでティーチャーにプレゼントしようよ!」
「音楽をプレゼント…素敵です」
「ひゅへへんひょー♪」
「うむ、良い案だ。皆思う存分歌うがいい。ワシが許可しよう」
「お?なんだ歌うのか?歌うのか?よっしゃ、ばっちくぉーい!!」
「あっつ!んもう、炎飛ばさないでちょうだい!乙女の柔肌が火傷なんてしたらどうしてくれるの!」
「えー何ソレ。おれたちも歌うのかよー?タクトとヒジリだけでよくない?」
「え?え?え?なんだこの流れ、俺たちも歌うのか?」
「さぁ?好きにしたらいいんじゃない?」
「俺は歌おうかな…」
 皆がいっせいにしゃべりだすので、もう何が何やら何が何なのかサッパリわからない。
「ぇーと。これは、つまり…?」
「僕たちから教官へのバレンタイン企画です」
 背後からの声に振り返ると、甘粕の手にはクラッカー。いつの間にやら長官もいる。
「さぁ、教官!僕たちからのバレンタインチョコケーキだ!!」
 タクトが示す先から現れたのはウェディングケーキも裸足で逃げ出す大きさのチョコレートケーキ。
「ちっ。作ったのは俺だ」
 企画立案・タクト。ケーキ製作・ヨウスケ。その他各自で材料調達・部屋装飾・アリバイ工作。甘粕は見張り。
「…ふふ」
 こみ上げる感動に自然と笑みがこぼれる。
「何そのケーキ…、もったいなくて食べられないよ!」
「可愛い子ちゃんが食わねぇなら、俺が食うぞ!」
「あ、おれこのてっぺんのやつがいいー!」
「そこはダメに決まってるだろうが!!」

「みんな、ありがとう!」

 かくして、カズキ作曲の即興バレンタインソングの大合唱とケーキ争奪戦は夜遅くまで続いた。
 アキラのチョコも翌朝に皆に渡り、それは1ヶ月後の確かな約束となった。



■■■
 と、いうわけで。LAGメンバーからの逆バレンタインサプライズでした。だれともくっついていない設定なのに甘粕くん贔屓なのは釣られたせいです(笑)。いやぁ、クリスマスのリベンジをさせてあげたいな、と思ったのですよ。そして後半キャラが多すぎて収拾がまったくつかないっていう…放っておくとコイツら無法地帯。アキラちゃんのチョコは市販品です。ウチのティーチャーは女子力低めなので、手作りとかはなから頭に無い。

 久々にパソ子からブログ更新したので携帯からの方は長くて読みづらいかもしれません。申し訳ない。

 そんなわけで、皆様にもささやかながら【愛】のおすそ分けを…ミーが欲しい!!
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